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彼は定期連載を持ち、彼の作品は不動の人気を持っていた。
作品は独創的かつ、白熱した展開で目を話せないストーリー、魅力的な登場人物で成るものであり、特に漫画に興味を持たない大人からも支持を得るほどであった。
しかし、ある時期から定期連載であるにもかかわらず休載が増えだし、一年連載し、その後一年の休載するといった不定期な発表となっていった。
長期にわたる連載による作者の疲労のためなのか、良作を作るために多くの情報の蓄積を必要としたのか、はたまた人気作家の傲慢か、理由は定かではない。
それに対し、新話の発表を待つファンたちは次のような反応をみせた。
仕事をしない作者を批判し、早く本来の定期連載に戻るべきだという批判派。
才能があるのだから多少のわがままは仕方がない、そのままでもいいから書き続けてほしい、という容認派。
期待に反する行為をする作者に嫌気がさし、もう読まないと言い出す反支持派。
そしてまた作者休載が続いたある頃、インターネット上の匿名サイトに、その作品のある時点からの続きが掲載された。
既存の漫画の模倣はすでに多く行われてきたことだが、その掲載が注目されたのは、内容の質が著しく高かったことだ。
業を煮やした新たな才能を持つファンの仕業か、または漫画家本人の気まぐれで新作の話を漏洩したのか。さまざまなうわさが飛び交った。
その模倣ともいえる掲載は定期的にサイトから更新された。
そこで興味深いことには、漫画家のファンの一部は、その模倣の内容を、本作の代替として楽しむようになった。
しばらくして漫画家は連載を再開した。